親が介護施設に入所して、実家が誰も住まない状態になった。
そういう連絡を受けてから、多くの人はしばらく何もできずに時間が過ぎてしまいます。遠方に住んでいればなおさらです。
「まだ親は生きているのに、家を片付けていいのだろうか」という迷いもあると思います。この記事では、実家が空き家になった段階で何から始めればいいか、実際の手順に沿って整理します。
いつから始めればいいか
「施設に入所したばかりなのに、片付けを考えるのは薄情ではないか」と感じる人もいます。
ですが、実家じまいは一気に終わらせる必要はなく、段階的に進めるものだと考えた方がうまくいきます。
入所直後は、まず郵便物の転送・公共料金の契約・介護保険や年金の手続きなど、生活まわりの整理を優先することになります。家財の片付けは、施設での生活が落ち着いてから、本人や家族の気持ちの整理がついたタイミングで少しずつ進めても遅くはありません。
ただし、次のような事情がある場合は、早めに着手した方がいいケースもあります。
早めに着手した方がいいケース
- 施設の費用を実家の売却資金でまかなう予定がある
- 空き家の状態で長期間放置すると、傷みや近隣トラブルのリスクが高い(老朽化した木造住宅、庭が広い、隣家との距離が近い等)
- 相続人が複数いて、将来の分割方法をめぐって意見が分かれそうな気配がある
逆に急いで進める必要がない場合は、本人の気持ちの整理を優先しても問題ありません。実家じまいに「正しい期限」はなく、家族の状況に合わせて進め方を決めるのが基本です。
実家じまいと遺品整理の違い
「遺品整理」という言葉には、故人が亡くなった後の片付けというイメージがあります。
でも親が施設に入所しただけの段階では、親はまだ存命です。この場合は「遺品整理」ではなく「生前整理」「実家じまい」という言葉の方が実態に合っています。
この違いは言葉の問題だけではありません。遺品整理は「故人の意思をもう確認できない」前提で進めるのに対し、生前整理・実家じまいは「本人にまだ確認できる」状態で進める点が根本的に違います。
この段階で無断で家財を処分してしまうと、後から本人が「あれは残しておいてほしかった」と言い出したり、他の家族との間でトラブルになったりするケースが少なくありません。
注意
本人が存命の場合、家財を処分するかどうかの判断は、できる限り本人の意思を確認してから進めてください。判断能力が低下している場合でも、写真に撮って見せる、まとめて説明するなど、本人が状況を理解できる形で確認を取ることをおすすめします。
最初にやること:3つのステップ
①家族で方針を確認する
まず決めるべきは「家をどうするか」です。将来的に売る、賃貸に出す、誰かが住む、空き家のまま維持する。
方針によって、家財をどこまで片付けるべきかが変わります。売却や賃貸を考えているなら、家財はほぼ全部出す前提で進めた方が結局早いことが多いです。
この段階で、相続人になる可能性がある家族全員に一度声をかけておくことも大切です。実家の片付けは「気づいた人がやる」形になりがちですが、後から「知らなかった」「勝手に決めないでほしかった」という不満が出ることがあります。特に不動産は名義や将来の相続に関わるため、方針だけでも早い段階で共有しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

また、親名義の家を将来売却・賃貸する予定がある場合は、認知症などで判断能力が低下する前に「家族信託」や「任意後見制度」の利用を検討しておくと安心です。
判断能力が低下した後だと、本人名義の不動産を売却・賃貸するために家庭裁判所の手続き(成年後見制度)が必要になり、時間も手間もかかります。
家族信託と任意後見制度の違い
家族信託:本人が元気なうちに家族の誰かと契約を結び、不動産などの財産の管理・処分権限をあらかじめ託しておく仕組み。契約内容を柔軟に決められ、判断能力が低下した後もスムーズに不動産の売却・賃貸ができます。
任意後見制度:将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ後見人になってもらう人と契約しておく仕組み。実際に判断能力が低下した時点で家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから効力が発生します。
どちらも司法書士や弁護士に相談しながら進めるのが一般的です。すでに判断能力が低下してしまっている場合は、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらう「法定後見制度」を利用することになります。
②中の物を仕分ける
「残す」「処分する」「本人に確認する」の3つに分けるのが基本です。優先して確保しておきたいのは次のようなものです。
最初に確保しておきたいもの
- 通帳・印鑑・保険証券・不動産の権利証などの重要書類
- 実印・マイナンバーカード・年金手帳など本人確認に関わるもの
- 写真・アルバム・手紙など、金銭的価値はないが本人や家族にとって思い出のあるもの
- 仏壇・位牌など、扱いに配慮が必要なもの
- 貴金属・骨董品・着物など、買取の対象になりうるもの
これらを最初に別にしておくと、後の作業がぐっとスムーズになります。
逆に、家電(冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコンは家電リサイクル法の対象で、処分には別途リサイクル料金がかかります)や大型家具は、量が多いと自治体の粗大ごみ収集だけでは回収しきれないことも多く、業者に依頼した方が結果的に早いケースが多いです。
量が多い場合は、自分たちだけで抱え込まず、生前整理に対応する業者に見積もりだけ先に取っておくと、作業量と費用の見当がつきやすくなります。見積もりは無料で対応している業者がほとんどです。
③空き家をどうするか決める
家財を片付けた後、空き家をどう扱うかも早めに決めておいた方がいいです。誰も住まない家は、通気が悪くなり湿気がこもりやすく、傷みが早くなります。害虫・害獣の発生や、庭木が伸びて近隣とのトラブルになることもあります。
売却するにしても、まず片付けと簡単な清掃をしないと、不動産会社に査定を依頼する段階にすら進めない、というケースも多いです。片付け後にハウスクリーニングまで済ませておくと、査定や内覧時の印象も良くなります。
遠方に住んでいる場合の進め方
実家から離れて暮らしている場合、片付けのために何度も現地へ足を運ぶのは大きな負担です。
この場合は、次のような対応をしている業者を選ぶと、現地に何度も行かずに進められます。
遠方対応で確認したいポイント
- 立ち会い不要:作業当日に依頼者が現地にいなくても、事前の指示だけで作業してもらえる
- 鍵の郵送対応:現地の鍵を業者に郵送し、作業後に返送してもらう
- 作業前後の写真報告:作業前・作業後の状態を写真で送ってもらえる
- 全国・広域対応:本拠地から離れた地域の実家でも対応してもらえる
これらに対応している業者かどうかは、依頼前に必ず確認してください。対応内容は業者によって差があります。
空き家のまま放置するとどうなるか
「とりあえずそのままにしておく」という選択も可能ですが、放置には次のようなリスクがあります。
まず、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、過料の対象になる可能性があります。実家が空き家になった段階で「誰が相続するか」がまだ決まっていない場合でも、早めに家族間で話し合っておく必要があります。

また、適切な管理がされず倒壊の危険がある、衛生上有害である等の状態になると、自治体から「特定空家等」に指定されることがあります。
指定されると、土地の固定資産税の軽減措置(住宅用地の特例)が解除され、税負担が大幅に増える場合があります。さらに改善されない場合は、行政代執行として自治体が強制的に解体し、費用を所有者に請求されることもあります。
売却や賃貸の予定がなく、当面空き家のまま維持する場合は、定期的な巡回・通気・通水などを行う「空き家管理サービス」を利用する方法もあります。月々数千円程度から利用できる業者が多く、遠方に住んでいて自分で頻繁に見に行けない場合に選ばれています。
費用の目安
家財の片付け(生前整理)は、部屋数や物量によって金額が大きく変わります。目安は次のとおりです。
費用の目安
- 1K・ワンルーム相当:3万円〜8万円程度
- 2LDK〜3LDK程度:10万円〜30万円程度
- 一戸建てまるごと:20万円〜60万円程度
買取に出せる貴金属・骨董品・家電などがある場合、その査定額を作業費用から差し引ける業者もあります。
逆に、不用品回収・特殊清掃・空き家清掃など依頼する内容によって費用の計算方法自体が変わるため、単純な比較が難しい点にも注意してください。金額は業者ごとの差が大きいので、必ず複数社から見積もりを取って比較することをおすすめします。
業者に依頼する場合の選び方
実家じまいを業者に依頼する場合、次の点を確認すると失敗しにくくなります。
業者選びのチェックポイント
- 許可の有無:不用品の回収には一般廃棄物収集運搬業の許可、買取には古物商許可が必要。無許可の業者は不法投棄・高額請求のリスク
- 対応範囲:片付け・買取・清掃・不動産関連の相談まで、必要な作業を一社でまとめて頼めるか
- 見積もりの明確さ:作業範囲と金額を書面でもらえるか。当日の追加請求がないか
- 資格・実績:遺品整理士などの資格保有者が在籍しているか
特に「無料見積もり」をうたっている業者でも、実際に現地を見てから金額が大きく変わることがあります。
電話やメールだけで概算を出す業者より、写真や間取りを見せた上である程度具体的な金額を提示してくれる業者の方が、後々のトラブルは少ない傾向にあります。

よくある質問
親がまだ元気ですが、先に片付けを進めても大丈夫ですか?
本人の同意があれば問題ありません。むしろ元気なうちに一緒に整理を進める「生前整理」は、本人の意思を反映しやすく、家族間のトラブルも起きにくい進め方です。
施設の費用が心配で、実家を早く売りたいのですが?
売却を急ぐ場合でも、まずは家財の片付けと簡単な清掃をしないと査定・内覧の段階に進めないことが多いです。焦って安値で買い叩かれないよう、片付けと並行して複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
兄弟姉妹の同意が得られず、片付けが進みません。どうすればいいですか?
不動産の処分には相続人全員の同意が必要になる場合が多いため、独断で進めるのは避けた方が安全です。話し合いが難航する場合は、司法書士や弁護士など専門家に相談する方法もあります。
仏壇や神棚はどう処分すればいいですか?
仏壇や神棚は、そのまま粗大ごみとして出すことに抵抗を感じる方が多いものです。菩提寺や近隣の寺院で「魂抜き(お性根抜き)」の供養をしてもらってから処分するのが一般的です。業者によっては、供養から回収まで一括で対応しているところもあります。
実家が遠方で、荷物の量も把握できていません。それでも見積もりは取れますか?
可能です。多くの業者が、写真や動画を送るだけでおおまかな見積もりを出してくれます。正確な金額は現地確認が必要になることが多いですが、まずは概算だけでも把握しておくと、今後の計画を立てやすくなります。
まとめ
- 親が施設に入っただけなら「生前整理」の視点で進める。本人の意思確認を優先する
- 最初に決めるのは「家をどうするか」の方針。それによって片付けの範囲が変わる
- 重要書類・写真・仏壇関連は最初に分けておく
- 遠方の場合は、立ち会い不要・鍵の郵送対応をしている業者を選ぶと現地に行く回数を減らせる
- 空き家の放置は、相続登記義務化や特定空家指定などのリスクがある。早めに方針を決める
- 費用は物量・依頼内容次第で大きく変わる。複数社から見積もりを取って比較する
生前整理に対応する業者だけを絞り込みたい場合は、生前整理業者一覧から探せます。お住まいの都道府県ごとに業者を探したい場合は、都道府県から業者を探すページからご覧いただけます。